オートゼロ
ここでの説明文内の 反転 文字は、F800上部の表示管部を表しています。
文字囲み 文字は、F800下部のパネルスイッチ(キー)部分を表しています。
オートゼロの概要
ネット計量機を基準に説明します。
計量機を稼働すると、ロードセルで吊っている機械構造部分に、計量物が付着します。
その付着した重量分、ゼロ点の重量値が増加します。
例えば、10g付着したとすると、ゼロ点の重量表示は0.01kg表示になり、0.00kgには戻らなくなります。
ゼロ点が増加(0.01kg)したまま計量を行うと、計量完了時に20.00kg表示してたものは、
排出後のゼロ点の重量表示は0.01kgですから、正味計量重量は19.99kgになってしまいます。
このゼロ点重量値の変動による、計量誤差を減らすために行っているのが、オートゼロです。
オートゼロ(以後AZと記す)は、計量していない状態の重量表示値を、0.OOkgにする処理の事です。
AZは、機械の振動や、排出時の空気の風圧を受けて、重量値がふらついている状態で行うと、
逆効果(AZが計量精度を悪くしてしまう)になります。
従って、計量機が静止(重量値安定)状態で、AZを行う事になりますが、特に2連以上の機械では、全ての計量を停止した後でAZを行いますので、かなりの時間(計量機能力が下がる)を要してしまいます。
表示重量値0.00kgの時に、AZを実行しても無意味なわけですから、計量能力を考慮すると、頻繁にAZをとる事は、芳しくないわけです。
AZの回路は、現在のところ、下記の3種類の制御方法があります。
@毎回 :グロス計量機、ネット単能機(オプション仕様)
Aタイマーで一定時間毎 :全機種の標準仕様
Bカウンターで一定計量回数毎:オプション仕様
AZ回路は、@〜Bのいずれかの方法で、ロードセル指示計F800へ、重量表示をゼロにする指令を出力します。
次に、F800には重量表示を0.00kgにする方法が、大別すると2通りあります。
@総重量を0.00kgにする、ゼロ調整、ゼロトラッキング等の処理
A正味重量を0.00kgにする、風袋引、等の処理です。
(詳細は、F800の取扱説明書を参照して下さい。)
弊社のAZは、Aの正味重量値を0.00kgにする方法で、行っています。
図の @ 風袋引 キーを
押すのと同じ事を、
シーケンサーから行っています。
従って、図の D 正味 表示が
点灯していなければいけません。
正味 と 総重量 との切替は、
図の B 総重量/正味 キーです。
AZを 風袋引 で行いますので、図の A 風袋引リセット を押すと、
図の C 風袋引 表示が消えて、
AZにて消去した重量値を
元に戻します。
AZは、 風袋引 の動作の、
上乗せ状態になっていますので、 風袋引リセット で、直前の重量値に戻るわけではありません。
ゼロ点移動の累積重量値表示になります。
ゼロ点移動の累積重量値表示は、常に増加するとは限りません。
製品付着は、ある一定の所まで溜まると、くずれて落ちる事もあります。
落ちる前の状態でAZが行われていれば、付着が落ちる事で、ゼロ点はマイナス側に変動します。
付着(付着の累積重量値表示)は、増加したり、減少したりする事になります。
※ 風袋引 風袋引リセット キーは常時有効ですので、計量投入中には絶対に押さないでください ※
オートゼロの選択
AZの回路の選択や、タイマー時間の設定には、被計量物の特性が関係します。
付着が無く、流れの良い(投入中に舞い上がった粉塵のみが、付着の対象となるような)製品の計量では、
毎回AZを行う必要はありません。排出後重量値は、ちゃんと0.00kgに戻るからです。
重量表示0.00kgでAZを行っても無意味です。
又、毎回AZの時間だけ計量機の能力が下がるので、毎回AZは不適当です。
タイマーでのAZを選択します。
AZを行う時間の設定は、重量データーから考えると、ゼロ点の重量が0.00kg〜0.01kgに変わるくらいの時間を設定する。と言うことになりますが、ゼロ点の変動自体が曖昧ですから、適当に設定します。
工場出荷時は、30分になっています。
計量機稼働中に重量表示を見ていると、ゼロの変動をある程度判断する事ができます。
また、途中で始動を「切」にして、計量機を停止させても、ゼロの変動を確認できます。
通常は、弊社出張員がその辺の状況判断をして、タイマーの設定値を決めます。
付着のひどい製品では、製品そのものがくっついてしまうので、やっかいです。
機械装置もバイブレーター、ノッカーなど、付着を除く構造にはなっていますが、完全ではありません。
製品付着のために、重量表示値と袋の中に入った正味重量とが一致しなくなります。
従って、このような製品では、計量機制御盤の重量表示上では計量精度が出ていても、
実際の袋重量では、精度が出てなかったりします。
計量機稼働中に、製品付着と製品落下を繰り返す事になります。
計量中に、新たに付着した場合、 重量表示値>実重量になります。
排出時に以前からの付着が、落下した場合、 重量表示値<実重量になります。
AZは、毎回AZを選択します。
毎回AZにしても、製品付着による計量誤差の解消にはなりませんが、毎回のゼロ点の変動に、追従してゼロ点を更正させた方が、良い結果が得られます。
タイマー制御の回路は、設定時間をゼロにして、毎回AZにします。
機械構造の違いによる、AZ関連の回路
ネット計量機、グロス計量機(包装機組込型)、グロス計量機(弊社袋クランプ装置)での、機械の構造の違いにより、AZ回路(関連する回路を含む)が、異なってきます。
ゼロ点
ネット計量機は、定量槽にて計量を行いますので、排出後重量表示は、(付着がなければ)0.00kgに戻ります。
グロス計量機は、袋クランプ装置をロードセルで吊り下げています。
袋を装着した時点で、重量表示器が袋重量分増加します。この重量値をゼロ点としないと、正味の計量ができませんので、袋込みの重量でAZを行います。袋を払い出した後、必ずマイナスの重量値になってしまいます。
ゼロ点の変動
ネット計量機は、定量槽をロードセルで吊り下げています。定量槽は、扉の中にありますので、作業者が触れる事はありません。また周辺の機械に、接触する事もほとんど起こりません。
従って、付着以外のゼロ点の変動は、ほとんど起こりません。
グロス計量機では、袋クランプ装置と袋を吊り下げています。袋が周辺の物に接触して、ゼロ点が変動する可能性があります。また、クランプ装置駆動のためのエアーホースや防塵布など、ネット計量機に比べて、付着以外の要因で、ゼロ点の変動が起こりやすい機械構造をしています。
特に自動包装機に組み込みのグロス計量機が、変動しやすくなります。
ゼロ付近信号の判定とAZ回路
F800の出力信号に、重量値がゼロ付近である事を示す、ゼロ付近信号(ゼロ範囲設定値以内に、重量表示が入っていれば出力される)があります。この信号の使用方法も異なってきます。
ネット計量機では、定量槽の排出動作が行われたかどうかの確認(重量での確認)に使用します。
■ ゼロ範囲設定値はラフにします。工場出荷時 200g
グロス計量機では、ゼロ点の変動のチェックとして、使用します。
■ ゼロ範囲設定値はシビアにします。工場出荷時 40g
ネット計量機と弊社袋クランプ型のグロス計量機のAZは、ゼロ付近信号を判定しません。
自動包装機に組み込みのグロス計量機のAZは、ゼロ付近信号を判定し、範囲外は警報を出力します。
ネット計量機のゼロ付近信号は、正味重量値 ≦ ゼロ範囲設定値 で出力します。
マイナス重量値は、ゼロ付近になります。
グロス計量機のゼロ付近信号は、正味重量の絶対値 ≦ ゼロ範囲設定値 で出力します。
袋を放すとマイナスになるので、ゼロ点は絶対値を判定します。
標準仕様制御盤(タイマーによるオートゼロ)
ネット計量機のタイマーAZ回路
始動「入」時の初回計量時と、タイマーで設定した時間に1回、AZを行います。
AZの間隔時間を調整するために、オートゼロタイマー(TAZ)が設けられています。
始動スイッチを「入」にすると、初回の計量投入前に、AZを実行します。
2連以上の計量機では、同時にAZ(重量表示が0.00kgになり)を取り、投入が開始されます。
「始動|入」状態になると、計量機が稼働中であると判断しオートゼロタイマー(TAZ)を作動させます。
(厳密には、1回目の投入が終了した時から)
TAZがタイムアップすると、計量サイクル(計量→完了→排出→排出終了)終了を待ちます。
サイクル終了直後は 、まだ計量槽に排出動作の振動,風圧などが残っていますので、重量表示を安定させるために、AZ遅延タイマー(シーケンサー内部タイマー T06 :3秒)が作動します。
この T06タイマーがタイムアップしたら、AZ指令(約0.8秒のパルス)を出力しています。
始動「入」時の初回計量 → → → → → → → → → → → → AZ(0.8秒)重量値0kg → 投入弁開
TAZタイムアップ → 各機計量サイクル終了待 → T06:3秒 → AZ(0.8秒)重量値0kg → 投入弁開
オートゼロタイマーの調整(TAZ)
TAZは、マルチレンジのタイマーです。出荷時は、約30分に設定されています。
時間調整が必要であれば、変更して下さい。
付着がほとんど無く、重量値が0.00kgに戻っているのに、頻繁にAZがかかる場合は長くします。
付着が多い時は、間隔時間を短くして、付着による計量精度誤差をなくすようにします。
時間設定を0秒にすると、毎回AZになります。
AZは、能力に影響します。頻繁に掛けると能力ダウン(2連以上の計量機では特に)になります。